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小籔千豊が語る、ゲームを通した子供の人格形成―『フォートナイト』親子大会直前インタビュー

今回弊誌では、“フォートナイト下手くそおじさん”こと小籔千豊さんに親子大会に向けての想いに加え、ゲーム文化への向き合い方についてインタビューを実施しました。

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小籔千豊が語る、ゲームを通した子供の人格形成―『フォートナイト』親子大会直前インタビュー
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アメリカに本社を置くゲーム会社Epic Games。同社の人気タイトルである『フォートナイト』の人気配信者“フォートナイト下手くそおじさん”をみなさんはご存知でしょうか。

吉本新喜劇の座長の小籔千豊さんが、当初は正体を隠しながら配信をしていた“フォートナイト下手くそおじさん”ですが、いまではなんとチャンネル登録者数10万人を突破。「登録者10万人で→親子デュオ大会を開催」という目標を達成し、3月7日に「フォートナイト 親子大会」が開催されます。今回弊誌では、親子大会に向けての想いに加え、ゲーム文化への向き合い方について小籔さんにインタビューを実施しました。


――「YouTubeで登録者10万人を達成したら親子大会を開催する」という公約がスタートでした。この目標については、開始時点では達成出来ると思っていましたか?

小籔千豊さん(以下、小籔)全然思ってませんでした(笑)。10万人行ったらと言いつつも、それが無理でも親子大会はやるつもりでした。僕としてはオフラインでやりたかったので「10万人近く行けば、大きな箱で出来るだろう」という考えでしたね。会場にお客さんが集まって、可能なら出場する50組全ての親子に舞台に上がって貰って、試合をモニターに映しながら「この親子が誰々さん親子を撃破!」と分割画面で映す。というのが理想なんですね。そのためには2万人くらいじゃ人が集まらないので10万人くらい必要だなと。

ただ、このコロナの状況ですので流石にオンラインでの開催になりました。将来的にコロナも収まって親子大会も認知されるようになったら、代々木体育館とか東京ドームとかさいたまスーパーアリーナとか、大きな会場で開催出来たら良いなと思ってます。

――公約の続きは登録者20万人で「あらゆるコネを使ってBIG芸能人を呼ぶ」で、30万人で「フォートナイト選手権を開催」です。ここまでは分かるのですが、40万人で「シンガポールでカジノ」と、50万人の「マカオでカジノ」というのは?

小籔もともと、「ミルクレープシンガポール(テレビ局員の一緒にフォートナイトやってくれてる相方)」と「ビッグタイガータケ(YouTubeスタッフ)」も含めた番組で仲良いスタッフ10人くらいでカジノへ行くのが恒例になっていたんですよ。で、2年前のカジノ旅行がシンガポールだったんですけど、その時点でもう僕は『フォートナイト』にはハマっていたので「ドラムもやらなアカンけど、自分専用のニンテンドースイッチ買おうかな……」と、購入ボタンを押しては戻すというのを繰り返している段階でした。


いざシンガポールへ向かうために関西空港に着いて、本でも読もうかなと思って買い物していたら目の前でスイッチが売っていて、もうたまらんようになってしまったんです。今から海外へ行くのにその場で買ってしまいました(笑)。

僕、シンガポールに好きなミルクレープ屋さんがあるんですけど、そこでこの話をしていて「それなら自分もスイッチ買ってやりますよ」と言って始めたので彼は「ミルクレープシンガポール」という名前になったんですね。

――カジノ仲間のスタッフさんなんですね。

小籔でも彼はテレビ局のスタッフさんなので、僕からの報酬を受け取れないんです。この状況なのでご飯にも行けないですし、それなら「40万人言ったら旅費も全部僕が持って一緒にカジノ行きましょう。」ということになりました。


――そんな経緯があったんですね。

小籔登録者がまだ1万人くらいの段階の生放送で言った、軽口みたいな感じなんですけどね(笑)。

――2020年8月に「フォートナイト下手くそおじさんは小籔だった」と明らかになった訳ですが、それ以来反響とかはありましたか?

小籔まず「フォートナイト下手くそおじさん」自体があまり知られていなかったので、「えぇ、小籔やったんか!」という衝撃はあまりないんですよ。ほんで知ってる人は僕って既に分かってるんで(笑)。

――今でも、お子さんと一緒にプレイされていますか?

小籔そうですね。大阪には自分用のパソコンを買いましたし、僕が大阪に居ないときは小学校4年生の子供がそれを使ってプレイしています。

――小学校4年生でゲーミングPCでプレイするというのはすごいですよね。

小籔周りには、もっと小さいころからキーマウ(※キーボードとマウス操作)でプレイしていてめっちゃ上手い子もいますね。うちはスイッチ版のコントローラー操作から始めたので、にわかPC野郎ですよ。たまに「一緒にやろう?何時に起きる?」と打ち合わせしてプレイしていますが「友達と一緒にやる約束してるから」と断られることも多いです。

――これだけ一緒にプレイされているというのもなかなか珍しいのかなと思いますが。

小籔『フォートナイト』って時間をかけて上手くなっていくものなので、周りの芸人だと後輩は賞レースやテレビで忙しかったりするし、先輩の年代だとちょっと馴染みがない。そういう理由でゲーム好きは多いんですけど『フォートナイト』好きはあんまりいないんですよね。僕が勧めたのでプレイしてくれている芸人は増えましたけど、親子でやってるという芸人は多くないですね。

――芸人仲間で一緒に練習をするということもありますか?


小籔芸人同士だと実力的には僕が頭一つ抜けているので、どちらかと言うとエンジョイで一緒にプレイしますね。ガチで練習するなら、同じぐらいの上手さの人とやるのが楽しいですね。ミルクレープシンガポールは同じ時期に初めて下手なところから上手くなっている仲間なので、一緒にプレイしていて楽しいです。新喜劇でのランキング戦もあるんですけど……。

――新喜劇で『フォートナイト』のランキング戦ですか?

小籔僕以外の座長3人と座員3人なんですけど、僕ひとりvs全員でも相手にならないですね。芸人と一緒にプレイするのはゲームをしながら喋ってるのが楽しいので、全然一緒に遊びますけどね。

――小籔さんは上達のためにはどういう練習や情報収集をしていますか?プロゲーマーの方とプレイしたりすることもあるかと思いますが。

小籔プロの方とコラボすることはありますが、なかなかプライベートではお願い出来ないですね。基本的にはYouTubeでプレイ動画や解説動画を見て勉強しています。プレイするとなったら配信しているので、楽しむというより「アサガオの観察日記」みたいに見て欲しいですね。アサガオって皆さんにサービスしないですよね、そんな感じで僕も平気で20分とか黙ったまま同じ練習を繰り返していることがあります。

――独学ということですね。

小籔コメント欄で視聴者に聞くこともあれば、ミルクレープシンガポールが「こんな動画があった」と教えてくれることもありますけどね。基本的には自分で探して「これ練習せなアカンな」と取り入れています。YouTube自体はドラムの練習を始めたときにはよく見ていましたが、音楽系の動画を見る媒体と言うイメージだったので9割『フォートナイト』を観るようになるとは思っていませんでした。

――現状は小籔さんとお子さんではどちらが上手いですか?

小籔全然向こうが上手いですね。

――以前はお子さんからプレイについてあれこれ言われるというエピソードがありましたが、今でも何か言われたりしますか?

小籔こないだも一緒にご飯を食べている時に「配信観てて思ってんけど、(建築を)編集するときに止まりすぎてるんちゃう?」と言われました。

――そういうアドバイスは素直に取り入れるんですね。

小籔息子のダメ出しをはやく克服したいんですけど、おっさんなので中々難しいですね。言われてすぐに出来ないのがおっさんにとって『フォートナイト』の難しい所ですね。

――それはやはり反射神経の問題とかになるのでしょうか

小籔脳の回転が遅いんですよね。トークだったら頭の回転も視野の広さも全然僕の方が上なんですけど、ゲームになると断トツで子供の方が速いんですよね。だから「なんでこんなに(自分は)できへんねやろう?」って思うし、「どうやっても出来へんヤツっておるんやな」って実感したので新喜劇の若手にも少し優しくなりました(笑)。

――子供の方が柔軟なことも多いですよね。

小籔凝り固まった考えが正解とは限らないって思い知らされますよね。ただ、あれだけ全くできなかった横跳びが今では楽々できることを思うと、やっぱりクリエイティブで積み重ねた基礎練習は嘘を付かないですね。ドラムをやっていても思います。練習の大事さはお笑いもドラムも『フォートナイト』も一緒ですね。

――「フォートナイト仲間」としての子供さんと印象に残っているエピソードってありますか?


小籔小学2年生くらいの時だったと思うんですけど、子供がダメ出しをしてくる割に「どうすれば良いのか」ということを言わないことがあったんですね。それは僕も教えられた感じがしないし、意味が無いと思ったので「それは変えた方がええんとちゃうか」と言いました。

『フォートナイト』をやってないと「教え方が良くない」という姿は見られなかったと思うので、そういう面を見られたことは良かったですね。

――普段は中々そんなシチュエーションもないですよね。小学校2年生くらいだと「なんでこんなの出来ないんだよ」と思ってしまう気持ちも理解できなくないですが。

小籔ですよね。ただ、相手に「なんでそれができへんの?」って言っても、その一言は小さな優越感があるだけでお前にとって何のプラスもないどころか失うものが大きいんやぞと。そんな事があったから、僕に教えてくることが減ったのかも知れないですね(笑)。

――今はしっかり教えられるように、鍛えてるのかもしれないですね。

小籔なので、それでも言ってきてくれることって「よっぽどアカンことなんやろな」と思います。熟慮して言ってくれてるんやなと。

――ゲームでそんな経験ができるとは。

小籔どんな大人になるかは分かりませんけど、こういうことを言わずして育つよりは良いですよね。

――『フォートナイト』に限らず、以前の小籔さんはゲームに対する偏見とかはあった方だったのでしょうか。

小籔むちゃむちゃありましたよ。

――今は変わりましたか?

小籔僕も子供のころはゲーム大好きでやってましたけど、やっぱり成績も落ちましたし、ゲームが原因ではないですけど対した学歴もなくて、しゃーなしに芸人になってしまった方なんですね。なので、ゲームは好きですけど「子供にはもっと将来役に立つことをやって欲しいな」と思っていました。

――そういう親御さんは多いと思います。

小籔嫁さんはゲームを遊んできていないので普通の厳しさでしたし、恐らく他の家よりはゲームを遊ぶことに制限をされて育ったと思います。子供が「他所に比べて俺は全然できてへん!」って言ってきても「うちはそうなんや」と。

――どういうきっかけがあって変化が起こったのでしょうか。

小籔嫁さんはe-Sportsのニュースとかを見て「プロがある世界を、親が制限するのはどうなんやろう」と感じたと言っていました。例えば、サッカーなんかは殆どの子がプロになれないのに、親は「スポーツやれ、サッカーやれ」と言いますよね。

別にうちの子供がプロになれるとは思ってないですけど、真剣に野球をやってる子が家で素振りしてたら「おお、偉いな」となるのに、うちの子が家で『フォートナイト』をプレイしててもそうはならない。そういうことを考えて嫁さんが僕に「これって間違ってんのかな。」って言うてきたんですよ。その当時は僕もまだ『フォートナイト』にはハマってなかったですけど、ああ、制限を緩めるんはええんちゃう。と。

――それで小籔さんも徐々に考え方が変わっていったんですね。


小籔別に「ゲームはとても素晴らしくて、子供の教育に欠かせなくて~」なんてことを言うつもりは全く無いんですよ。ただ、以前の自分からするとゲームに対する偏見や誤解って確実に減っていっているので、そういうところは発信していきたいですね。

「ゲームばっかりして勉強しない」と言われたら、勉強も大事だからやらないとダメですよね。でも「『フォートナイト』をやってると口が悪くなって、ネットのリテラシーが下がる」なんていうのは半分しか合ってないですね。「じゃあ『フォートナイト』やってこなかった大人はネットのリテラシー大丈夫ですか?」って話ですよ。

大人が出来てないことを、子供にだけワーワー言うのは違いますよね。それだったらゲームを辞めさせるよりも、子供が『フォートナイト』をプレイしていて良くない言葉を使っている時にちゃんと訂正した方が良いですよね。

――ちゃんと問題に向き合う、ということですね。

小籔子供にも、顔見えへんからって好きに言うてええんか、それはダサいんちゃうか。と言いますね。今後は更にSNSやネットって発達していくと思うんで、そういう時にちゃんとした感覚を持っていなかったら一瞬で「アイツ変な奴やな」と周りの信用を失うことになるんやぞ。と。

――『フォートナイト』を通じて、そういうことが教えられれば良いですね。

小籔だから制限するよりも、大人が中に入っていくのが良いと思うんですよね。柔道とか大人の目がないところで子供だけで好きにやらせたら大怪我してもおかしくないじゃないですか。でも、嘉納治五郎(※講道館柔道の創始者で、「柔道の父」と呼ばれた柔道家)さんとかが築いてきた歴史があって、指導法が確立されていて、顧問の先生が見てるから柔道という競技は素晴らしいんです。

ゲームも今は「出来たての柔道」のような状態なので、ちゃんと大人が導けば「フォートナイト」もいずれ“道”になっていくと思うんです。もちろん、運動能力や健康についてはもっと気を付けないといけないと思いますけどね。

――スポーツのようになっていく、と。


小籔普通のスポーツとの差って、もうそういう所だけだと思うんです。ゲームでもちゃんと挨拶をして礼に始まり礼に終わる。そうやって「ゲームやっていると言葉遣いが良くなって、リテラシーが身に着くよ」という方向に大人が持っていかないといけないです。

僕は『フォートナイト』が大好きでお世話になってますから『フォートナイト』界の嘉納治五郎にはなれないですけど、そういう風に発信したいですね。だから僕の配信では「コメント欄は平和に」「本業頑張ろう」「両親に感謝」というのがモットーなんです。子供の友達とプレイするときに「両親に感謝して、君らが社会人になったら最初の給料のうち5万円はプレゼントしーや」と言うと、子供はよう分かってないんで「はーい」って言いますし、コメント欄も「また5万の話や!」ってなりますけどね。

――なんだか凄く聞き入ってしまいました。

小籔もちろん「イェーイ!」っていうノリの配信者もおってええと思うんです。ただ、真面目な大人の『フォートナイト』が僕のやり方なのかなと。さっきの「教え方」の話じゃないですけど、もし「ゲームは良くない」って言う人がいたらダメ出ししてるだけじゃなくて、中に入ってきて正して欲しいですね。

――最後に、親子大会の見どころを紹介してください。

小籔親子揃って上手いペアも居るんですけど、中には「子供が上手くてお父さんは着いて行くだけ」というペアもいてます。実際に僕が倒されてしまったチームも明らかに片方のプレイヤーだけ追いついてなくて、「この画面はお父さんの方ですね」みたいな楽しみ方もあります(笑)。

ゲームを1,000嫌いやったら、それを100や200に少しでも減らしたいですね。先日もプレ親子大会を開催して上位5チームにはインタビューをしたんですが「普段は一緒にゲームをしてくれないのに、この大会のために練習をして会話が増えました」という声もあれば、別の方からは「ストームに巻き込まれてダウンした自分を背負って移動してくれる息子の姿に、思わず泣きそうになりました」なんて声もありました。

もちろん、子供には「それだけ上手にプレイできるスイッチやパソコンはお父さんが買うてくれてるやから感謝せぇよ」とも言いました(笑)。

――楽しみにしています。

小籔ハラハラしながら、ドキドキしながら、それでいてほのぼのできたらなと思います。人をやっつけるゲームですけど、そんな殺伐としたゲームでほのぼのできるところを見せたいと思います。

《森 元行》

森 元行

海外のゲームショウにてeスポーツの大会に出会い衝撃を受け、自身の連載「eスポーツの裏側」を企画・担当。プロプレイヤーはもちろん、制作会社や大会運営責任者、施設運営担当者など「eスポーツ」に携わるキーマンに多くのインタビューを実施。 2022年3月 立教大学大学院 ビジネスデザイン研究科 博士課程前期課程(修士/MBA)修了。

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