夏休み!! 大人になってしまえばあまり縁のないイベントですが、それでも不思議とテンションの上がってしまうワードです。
そしてそんな夏休みの人気者といえば、今も昔も、兎にも角にもクワガタ!(※個人の意見です)なわけですが、その中でも別格の存在感を放つ種がいます。
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そう、「オオクワガタ」です。誰もが名前くらいは聞いたことがあるのではないでしょうか。
さまざまな昆虫を採集できる「あつまれどうぶつの森(※以下『あつ森』)」にも、当然のように登場します(出現率は高くありませんが)。
このように昆虫界ではスター格であり、やたらと有名なオオクワガタですが、人気の秘密は一体どこにあるのでしょうか。
まず理由のひとつは日本産のクワガタの中でも大型になること。
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体長は7センチほどとノコギリクワガタやミヤマクワガタと大差ありませんが、胴体や頭が横に幅広く、ソリッドな黒い体色も相まって非常にボリューム感と重厚感にあふれています。
ほかのクワガタのようにギザギザしていない、スマートなアゴの形状も高ポイントなのかもしれません。
つぎに、希少価値が高いこと。
オオクワガタは日本国内の広い範囲に分布します。しかし生息環境の開発によって個体数は減少しており、今やおいそれとは見つけられないものなのです。
それゆえ、かつては愛好家の間でたいへんな高値で取引きされ、90年代には「黒いダイヤ」という通称でマスコミに取り沙汰されたりもしました。
その表現も大袈裟なものではなく、当時は大型のものであれば1匹あたり数十万円の値がつくこともあったといいます。
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そういえば『あつ森』でも買取価格10,000ベルと昆虫としてはかなりの高額に設定されています。これはこうした背景を反映したものでしょう。
しかし、それも今となっては昔の話。
現在では養殖技術や大きく育て上げるためのメソッドが確立され、ずいぶんと落ち着いた価格で流通するようになりました。
……全国チェーンのホームセンターで、大型のオオクワガタがたったの2,000~3,000円で売られるようになるなど、僕が子どもの頃はとても考えられないことでした。
日本人の昆虫に対する執念には驚くばかりです。
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とはいえ、自然下に暮らすオオクワガタが「レアモノ」である現状は依然として変わりません。
クヌギの木にはりつくオオクワガタ、という光景はまだまだ日本の子どもたちにとっての憧れであり続けるのでしょう。
『あつ森』博物誌バックナンバー■著者紹介:平坂寛
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Webメディアや書籍、TV等で生き物の魅力を語る生物ライター。生き物を“五感で楽しむ”ことを信条に、国内・国外問わず様々な生物を捕獲・調査している。現在は「公益財団法人 黒潮生物研究所」の客員研究員として深海魚の研究にも取り組んでいる。著書に「食ったらヤバいいきもの(主婦と生活社)」「外来魚のレシピ(地人書館)」など。
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