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ウインビー国民的アイドル化計画
…という言葉をご存知でしょうか。ウインビーは今回紹介する女の子の名前ですが、一番最初に登場したのは1985年に稼動したコナミの縦スクロールシューティングゲーム『ツインビー』を2人プレイで遊んだ際に2P(2番目のプレイヤー)が操る、マスコット的なかわいらしさを持つ戦闘機の名前としてでした。
『ツインビー』はその後シリーズ化され、1991年の『出たな!!ツインビー』ではツインビーのパイロットである同名の少年と、ウインビーのパイロットである同名の少女が登場。それぞれが初代『ツインビー』のパイロットたちの子であると発表されました。
コナミが「ウインビー国民的アイドル化計画」を展開したのは、ちょうどこの頃でした。筆者はその計画によく聞き覚えはありつつ、どのような経緯で始まったかまで覚えていなかったのですが、インターネットの叡智によると「コナミレーベル5周年を記念したマルチメディアプロジェクト」として始まったとされています。
一大プロジェクトの期待を一身に背負ったウインビーは生年月日・身長・趣味、はては体重や3サイズまでアイドルとしての存在感を高めるプロフィールが着々と発表され、"ピアノはウインビーが演奏している"という体のコナミゲームサウンドアレンジアルバム「ウインビーのネオシネマ倶楽部~エバーグリーン編」などのCDもリリースされたりと、まさにバーチャルアイドルの先駆けと呼ぶにふさわしい輝きを見せます。
さらに、1993年にはラジオ番組「ツインビーPARADISE」が放送スタート。そこでラジオドラマ(音声のみのドラマ)を展開するにあたって戦闘機とパイロットの名が同じでは分かりづらかろうと、"少年パイロットとしてのツインビー"にはライト、"少女パイロットとしてのウインビー"にはパステルという新たな名前が与えられました。
「ツイパラ」の愛称で親しまれたこの「ツインビーPARADISE」が一躍大人気となり、番組は4年以上にわたって放送。パステルは「自分とライトは従兄妹だと聞かされて育ってきたのに実は血縁関係ですらなかった」と衝撃の事実が明かされたり、さらに「ライトの父・アンナモンは別宇宙の惑星ソルティアスからの来訪者だったので、それを知ったらライトもいつかソルティアスに帰ってしまうのでは…」とやきもきしたりなど、じっくりと丁寧に設定が盛られ、それに合わせてパステル人気もどんどん高まっていきました。
しかし、ここで人気が出たのは"ライトをずっと兄同然の存在だと思ってきたけど、血縁ですらないと分かると今度は異性としても意識してしまう、明るくてちょっとヤキモチ焼きなどんぶり島のアイドル・パステル"であって、計画当初の"パイロットとしてのウインビー"とは似て非なるキャラクターになったなぁという感覚が、筆者の中にはなんとなくありました。
そういう意味では、この頃にはすでに「ウインビー国民的アイドル化計画」は自然消滅していた…といいますか、「ツインビーPARADISE」、および『ツインビー』シリーズを盛り上げる方向へとシームレスにシフトしていたのかもしれません(区切りのようなものが発表されていたのを筆者が知らなかっただけという可能性もありますが)。
ともあれ、コナミはこの数年後、『ときめきメモリアル』の藤崎詩織でも本人名義のCDをリリースしたり、ミュージッククリップを発表したりと一大ムーブメントの勃興に成功したことを思うと、そのノウハウはこのときの「国民的アイドル化計画」でしっかり得られていたのだろうなと感じます。
そんなウインビー≒パステルですが、2019年7月にはアーケードゲーム『ボンバーガール』に新キャラクターとして参戦。"大先輩"藤崎詩織のさらに上をいく存在ということで、"超先輩"と公式に呼称されました。
当時のさまざまな作品・メディアのキャラクターデザインをミックスしつつ正統進化させたようなルックスに、キャストも当時のままの椎名へきるさんとなっており、そのあまりのなつかしさ、"バーチャルアイドル"ならではの当時と変わらぬ魅力に、当時のパステルをご存知の方は思わず「ぐわっ!」と胸を押さえてうずくまったのではないでしょうか。
筆者はラジオドラマ放送当時にリスナーの1人でしたが、パステル、マドカに続く3人目のヒロインとなるアンドロイドのサリュートが登場して以来、パステル推しからサリュート推しへと宗旨替えしていたのでなんとか耐えられました。