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「翼、俺はお前に上には上がいることを知らさなければならない…」テクモから1990年に発売されたファミコンソフト『キャプテン翼II スーパーストライカー』は、高橋陽一氏による大人気コミック「キャプテン翼」のその後を全編ゲームオリジナルストーリーで描くゲームです。
原作最終回の3年後から始まる本作のストーリーは、原作ファンの一人から見ても実に納得のいくクオリティでした。中学卒業と同時にブラジルに渡った翼はサンパウロFCの背番号10&キャプテンとなっており、ユースクラスのナンバーワンを決めるリオカップで見事優勝。
そしてその頃日本では冬の高校サッカー選手権が開催されており、1回ずつ優勝旗を分け合ってきた岬や石崎たち南葛高校と日向率いる名門・東邦学園がV2をかけて激突します。
前作ゲーム『キャプテン翼』で南葛中学(や全日本Jr.ユース)がボールを持っているときの曲はアニメのOPテーマ「燃えてヒーロー」のアレンジBGMであったのに対し、『II』の南葛高校はアニメEDテーマ「冬のライオン」のアレンジBGMだったり、決勝戦の南葛高校vs東邦学園が延長戦でも決着がつかない場合は同時優勝となるなど、原作リスペクトがそこかしこに見られる力の入りようで、「これはもう原作の正当な続編と言ってもいいのでは」と感じたファンも多かったのではと思います。
そんな翼と日本の黄金世代たちが合流して全日本ユースを結成し、ストーリーはいよいよクライマックスのワールドユース大会編に。翼はその合間に特訓を重ね、かつてスーパーストライカーと謳われた選手・ジャイロが編み出した必殺シュートのサイクロンを習得。そして決勝戦では、恩師であるロベルト本郷が監督を務めるブラジルユースと激突します。
前置きが長くなってしまいましたが、そのブラジル戦の、しかも後半から登場するのが今回紹介するコインブラです。ストーリーが丁寧であるということは、言い換えれば翼や仲間たちの原作からの成長ぶりが納得のいく形で描かれているということでもあります。
そうであるにも関わらず、本作の副題でもあるスーパーストライカーと称されるこのコインブラがまた強い! ひとたびボールを持つとそのドリブル速度は群を抜いて早く、右足から放たれる「マッハシュート」はG.S.G.K(グレート・スーパー・ゴールキーパー)の名をほしいままにする日本の守護神・若林からも悠々とゴールを奪います(※「S.G.G.K」という呼称も知られていますが、本タイトルでは「G.S.G.K」表記)。
しっかりと登場するのが最後の最後ということもあり、コインブラ自身に関する描写は多くはないのですが、翼たちがどれだけ成長してきたかを理解できているからこそ、さらにその上をいくコインブラの強さも瞬時に伝わります。原作コミックでもブラジルは「サッカー王国」「翼の憧れの国」として存分に語られていたので、そういう意味でも納得の強さでした。
そしてサッカーが好きな人ならすぐにピンと来たと思いますが、コインブラという名前は日本サッカー界に大きな影響を与えたサッカーの"神様"ジーコ選手の本名であるアルトゥール・アントゥネス・コインブラに由来していると思われます。
筆者は「キャプテン翼」のファンというだけでサッカー少年ではなかったので発売当時にそこまで気づけなかったのですが、これを知っていたら名前を見ただけで「こいつは絶対強いヤツだ……」と思っていたことでしょう。
【2022年1月18日23時30分】「G.S.G.K」について、注釈を追記しました。