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◆全60階の塔がプレイヤーを待ち受ける!
1984年にアーケードゲームが稼動したナムコ(現 バンダイナムコエンターテインメント)のアクションRPG『ドルアーガの塔』。今回紹介するドルアーガはそのラスボスで、8本の腕と4本の足を持つ緑色の悪魔です。
本作を手がけた遠藤雅伸氏によると、ドルアーガのルックスや名前はインド神話における戦いの女神ドゥルガーが元ネタなのだそうです。ドゥルガーは『真・女神転生』シリーズや『ペルソナ』シリーズなどで、ちょくちょく名前を見かける神様ですね。
さて、そんなドルアーガが待つ全60階層の塔に挑むバビリム王国の王子・ギルの目的は3つあり、「国の平和の象徴であるブルークリスタルロッドを奪還すること」、「ドルアーガに囚われ、塔に幽閉されている恋人のカイを救出すること」、そして「ドルアーガを倒すこと」です。
塔の59階で待ち受けるドルアーガは、強力な魔法を放ち、壁をすり抜けながら移動するというまさに悪魔と呼ぶにふさわしい強さでしたが、本作においてそれ以上の障壁となるのが、そこに至るまでの塔の道のりでした。
◆宝箱の出現条件が難しすぎる!
各フロアにはギルの助けとなる便利なアイテムが隠されており、フロアごとに定められた特定の条件を満たせば宝箱が出現するのですが、中には「到底の座標を上から下へと通過する」という発見するのが極めて難しい条件もありました。
当時はインターネットがまだ普及していないのはもちろん、アーケードゲームの攻略本というものもほぼなかったため(攻略情報をまとめた同人誌などはゲームによっては存在したようです)、ゲームセンターで本作を遊ぶ多くのプレイヤーたちは本作の謎にノーヒントで挑む手探りの毎日でした。
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また、当時のゲームセンターは客が自由にメッセージやイラストを書いていいコミュニケーション用のノートが設置されている店舗が多かったため、いつしかそのノートは本作の「攻略情報共有の場」としても機能するようになりました。大勢の知恵や知識を結集させなければ、この塔はとても踏破できません。
しかし、お得な情報があればそれを秘匿したくなるのも人の性(さが)。プレイヤーの中には、苦労して見つけた攻略法を人に知られぬよう、筐体にお手製のスクリーン(囲い)などを乗せて画面を隠しながらプレイする人もいたそうです。
見せてくれてもいいのに…とつい思ってしまいそうですが、かといってマナー違反などと非難するのもちょっと違うような気がします。ともあれ、今日とは大きく異なる独特の雰囲気が伝わってくるエピソードですね。
◆ビデオゲームに続き、高難度ゲームブックが登場!
そんな本作も翌85年にファミコン版が発売され、それを受けて全フロアの宝箱出現条件が掲載された攻略本が登場すると、ようやくクリアを狙いやすいゲームに。しかし、そのさらに1年後となる1986年に発売された創土社による『ドルアーガの塔』ゲームブックシリーズがかなりの高難度で、再び全国のギルを悶絶させました。
全3巻で各巻20階層ずつという大ボリュームに加え、フロアを上がっていくと人が生活している階層があったり、塔の探索をともにする仲間との出会いがあったり、時には立体交差のような構造をしたフロアがあったりなどというオリジナル深堀り描写てんこ盛り&歯ごたえ満点の内容で、当時小学校低学年だった筆者はもちろん、3歳年上だった筆者の兄もそろってクリアできず撃沈しました。なんともニガい思い出です。
しかし、このゲームブックは2023年1月現在Kindle版が配信されており、気軽に遊べるようになっています。それはとてもいいことですが、筆者は「今ならクリアできるだろうか…いや、もし今でもクリアできなかったら恥の上塗りではないだろうか…」と、この悪魔の塔に翻弄され続けています。
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