■シリーズのゲーム性は、『真・女神転生III NOCTURNE』で更に飛躍する
いくつかの特徴的なシステムは、『デジタル・デビル物語 女神転生』時代にその基礎が作られました。ですが、『真・女神転生』シリーズが展開する中で生まれた新システムも数多くあります。
その代表例ともいえるのが、『真・女神転生III NOCTURNE』(2003年発売)に初めて実装され、以降のシリーズ作にも継承されている「プレスターンバトル」です。
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当時は多くのRPG作品が、ターン制のコマンドバトルを採用しました。コマンドバトルはアクション要素がないため、世代を問わず楽しめるといった優れた特徴を持ちますが、一方で単調になりやすいといった指摘もあります。
もちろん開発側は、単調にならないコマンドバトルを模索し、作品を通じて新たな試みや戦略性を提示してきました。その試みが成功した作品もあれば、理想に届かなかった作品もあり、よりよりコマンドバトルを生み出す道のりは一筋縄ではいきません。
そうした時代の中、『真・女神転生III NOCTURNE』に搭載された「プレスターンバトル」は、シリーズファンはもちろんRPGユーザーにも大きな衝撃を与え、非常に優れたシステムとして高く評価されます。
「プレスターンバトル」を簡単に説明すると、敵の弱点を突いたり、攻撃でクリティカルが発動するといった「有利な条件」が起きると、味方の行動回数が増える──という仕組みです。
クリティカルのように確率が絡むものもありますが、敵ごとの弱点は固定されているので、「敵のデータ」と「弱点を突く攻撃方法」を事前に押さえておけば、その敵と戦う時は“行動回数の増加”を確定で狙えるようになります。
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例えば、4人パーティの全員が弱点を突いた場合、行動回数は一気に跳ね上がり、1ターンで8回もの行動が可能になります(弱点を突く4回行動+増加した4回分)。こちらの行動が全て終わるまでターンが経過しないので、怒涛の攻撃を繰り出し続けることも可能です。
「プレスターンバトル」は、「弱点を突く」という従来の戦略的要素に、「行動回数を増やす」という圧倒的なアドバンテージを与えるものでした。その結果、勝利を掴むための有用な戦術となったのはもちろん、“一方的に攻撃する”という状態そのものが非常に心地よく、プレイヤーが積極的に狙いたくなる魅力的なシステムとして結実しました。
ちょっとくだけた表現になってしまいますが、「ずっと俺のターン」というネットスラングがあります。「プレスターンバトル」はまさしくこの状態そのもの。コマンドバトルに新たな革新をもたらした、と言っても過言ではないほどです。
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ちなみに「プレスターンバトル」は、敵側もこのシステムの恩恵を受けることができ、パーティの編成次第で「敵の行動がどんどん増えていく」「ずっと敵のターン」という事態に陥ることもあります。
プレイヤーだけが有利ではないからこそ、戦いに緊張感が生まれ、ゲームシステムへの理解を能動的に深めたくなる。そうしたプレイ意欲の向上に繋がる点も、「プレスターンバトル」が持つ素晴らしい魅力のひとつでしょう。