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「毎日、変化をし続ける」初画集『いかづち』を発売したイラストレーター・LAM氏インタビュー、個展『千客万雷』に込めた思想が今明かされる

イラストレーター・LAM氏にインタビュー!初画集『いかづち』を発売し、個展『千客万雷』を開催するなか、心境や変化や想いについて伺いました。

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Z世代を中心にサブカルチャーでとりわけ注目され続けている一人のクリエイターがいます。『ペルソナ』シリーズで知られるアトラスを退職後、フリーランスのイラストレーターへと転身。その後数々のIP作品とも関わり、エッジの効いた持ち前の画風で数多のユーザーたちを魅了し続けてきました。

挑戦的な表情づくり、計算された鮮やかな色遣い、そして一度たりとも忘れることなどできやしない、アイコニックで引き込まれる「目」の表現。これらの要素が組み合わさって生み出されるイラストの数々は、誰から見ても唯一無二性を確立していると言えるでしょう。そんな作品たちに酔いしれるフォロワーたちを次々に生み出し、絶大な人気を誇っているイラストレーターこそLAM氏です。

LAM氏は、2024年10月23日にパイ インターナショナルから、自身にとって初となる画集『いかづち』を発売します。また、11月1日からは4年ぶり第2回目となる個展『千客万雷』が、アニメイト池袋本店「Space Galleria」にて開催予定(25年1月からは大阪でも開催)。今回インサイドでは、およそ3年ぶりとなるLAM氏へのインタビューを実施することになりました。LAM氏のこれまでとこれから、画集と個展に込めた想いをたっぷりと語っていただきました。


■ “リベンジ”の意を込めた2回目の個展と、初の画集についての想いを語る

――本日はよろしくお願いします。早速ですが、11月から4年ぶり第2回目の個展『千客万雷』が開かれるということで開催のきっかけについて教えていただけますか?

LAM:4年前に初めての個展をやらせていただいたのですが、そのタイミングに丁度、コロナが日本へ来た時期だったんです。緊急事態宣言もあり、「外に出てはダメ」というときに丁度始まったんです。その頃は感染者数人とかだったけれども、未知の病でしたし外出はしてはならないという空気でした。

そういう状況の中でも「なんとか個展を開催しよう!」と準備していただいて、会期はグッと短くなりましたが、それでも来て下さるお客さんがたくさんいました。ただ、準備をガッツリ重ねた個展だったぶん、もっとたくさんの方に届けたかったなという気持ちも残って。そこからしばらくお仕事で忙しくさせていただいている中で、「また個展をやりたいな」という気持ちが沸々と湧いてきたんですが、前回の個展の悔しさを全てぶつけて、さらにパワーアップした個展を目指すとなるとなかなか踏ん切りがつかなかったんです。

前回の個展もそうですが、僕らは熱量を込めて「個展」というものを作ろうとしています。僕自身、ネットで絵を見るのが当たり前になっているなと思っていて。僕自身もSNSで育ててもらった自覚はあるんですが、せっかく交通費を払って会場に足を運んでいただくなら、ネット越しに見る絵とは"違う体験"を与えたいなと。

小さい画面ではなく大画面で見れる映画館だったり、イヤフォン越しの音とは違う、生の音が聞けるライブ会場だったりとか、そういった“感動体験”ってあるじゃないですか。そういうものを個展で用意できたら...といった気持ちは前々からあって、そこの思考に一番フィットするご提案をいただけたのが、アニメイトの「Space Galleria」さんでした。それで「やろう」と、重い腰を上げた感じですね。

――個展の題名にある『千客万雷』のコンセプトついてお聞かせください。また、LAMさんご自身が感じている個展の見どころやイチオシとしているところはありますか?

LAM:『千客万雷』は「たくさん人が来てくれたらいいな!」といった願掛けでもあります。ただ、個展というのは一方通行じゃなく、お客さんやファンの方々への恩返し、コストを払ってご足労いただいて、一緒に参加してもらうものだとも思うんです。

なので僕だけで完結するのではなく、お客さんに来てもらって作品を見てもらい、感想を発信していただいたり、そうした輪が広がっていったり、一緒に空間を創り上げていただいたりというか。そういう気持ちも込めて、お客さんとの相互関係を感じるような言葉、「客」という言葉が入った「千客万来」が良いなと。そこに僕がトレードマークにしている「雷」を入れました。

遊園地とかもそうですけど、お客さんがいなければ成立しないじゃないですか。だからそういう空間にしたいという想いを込めています。

――ある意味では第1回目のリベンジといった気持ちも込められているんですね。

LAM:そうですね!

――初の画集『いかづち』が発売されますが、イラストレーターとして現在からこれまでを振り返ってみて、ご自身にはどんな変化がありましたか?

LAM:変化しかないですね。

――変化しかない?

LAM:独立してから今年で5年目くらいになるんですけども、デビューしてから今日までが「一瞬かな?」ってくらいあっという間だったなと思っていて(笑)。

もう、“寝ても覚めても絵のことしか考えずに今日まで来たな”と思っています。やっぱり描けば描くほど上手くなるじゃないですか。独立したての頃とかは全然技術が無く、描きたいと望んだ絵を生み出せる技量とか知見とか視野がない状態だったんです。

仕事をたくさんこなして色んな絵に触れていくうちに、どんどん上達していっているなと自分自身でもひしひしと感じていて。そういった意味では毎日、変化変化変化...みたいにずっと変化をし続けています。今でも、「昨日より今日描いた絵の方が上手いな」と思うので、そういう意味ではスタートラインが低かった分、伸び代があるなぁと思いますね。一緒に活動しているチームメンバーからも「本当に上手くなったね」と言われます。なので、そういう意味では色んな変化がありました。

会社員からイラストレーター、職業作家になるというところでの変化も凄く大きくて。フリーランスとして、プロのイラストレーターとして生きていく中で色んな方と交流を持たせていただいたり、イベントに出たりだとか。本当に“新しいことばっかり”というのが楽しくて。

ゲーム会社に居た頃は、チームで作る楽しさや会社員としての面白さみたいなものもありましたが、イラストレーターとして独立してからの数年間も目まぐるしい変化に溢れていました。

――初となる画集と2回目の個展を開くにあたって、新しく発見したことなどがあればお聞かせください。

LAM:画集のオファー自体はこれまでもいただいていましたが「PIEさんとやらせてください!」と、最終的に僕から言いました。ただ、画集というのをいつ出そうとずっと決めあぐねていた理由があって.......。「載せる絵がないよ」って思ったんです。

僕は画集が好きで、色んな作家さんの画集をたくさん読むんですけど、「いやぁ、僕はまだ出せないなぁ......」って読む度に思ってました。

やっぱり画集ってどういう画集のコンセプトかに寄るとは思うんですけども、今回出させていただく『いかづち』は、傑作選みたいなもの。「LAMさんの名刺代わりの本にしましょう!」と、大場さん(※PIE編集長)に言っていただいて、じゃあ名刺代わりの絵を入れようって思ったときに「これが僕です!」っていうワケじゃないですか。「えぇ、載せれる絵あるかな......?」みたいな(笑)。

そもそも画集っていうものに対して慎重になっていたところもありました。じっくり時間を取れて描き下ろしのオリジナル作品をたくさん準備できて、ページ数も確保できる状態になったら、画集を出そうと思っていたんですけれど、今回PIEさんとの出会いや個展というタイミング、デビューして5年という節目もあったので「じゃあやりましょう!」と、始まったのがこの本です。

画集は大場さんが凄すぎてあんまり僕は大変じゃなかったと正直思ってます。厳密には締切がたくさんあったので「描かなきゃ」というのはありましたけど、それは当たり前じゃないですか(笑)。

今回、画集で面白いなと思ったのが「どういう本にするか」「どういうターゲットに刺すか」とか、商品=プロダクトとしてのマネタイズ面など、商業画集のビジネス的な部分です。逆に右脳で考えるところのような「かっこいい!」みたいな、箱や紙質、帯の入れ方を含めた一個の流通する商品をチームで作っていくのも楽しさや喜びが凄いあって画集作りを苦に感じた瞬間がなかったですね。全部面白かったです。

PIEさんが「こういうの、どう?」「これを見て?」ってきて、「いいね!いいね!」って言うくらいで。うん、凄い楽しかったですね。

LAM:全然、絵が間に合わなくて、ホントご迷惑をたくさんおかけしたので「何が苦労しなかっただ!」とか思うかもしれませんけど......(笑)。

元々(画集を)作るなら「PIEさんが良い」って僕自身が思っていた会社さんだったので、やっぱり間違いなかったなって。出来上がっていく過程を見ながら「良かった!」って思っていましたね。初めて自分の本を作るという色々な喜びや発見はありました。

個展での新しい発見は現在進行形で発見中なんですけど、こんなに大変だとは思っていなかった。自分のせいではあるのですが、こんなに......こんなに大変......!?って。

前回はこんなに大変じゃなかったんです。今回は会場が凄く広いこともありますし、展示作品の数についても「やるなら今までのお仕事の絵とか、過去の同人誌の絵とか余すことなく、ファンの人が喜ぶ空間にしよう」ということで、展示予定のデータを集めたら“595データ”あったんですね。

――お~(笑)

LAM:全部が許諾を取れるか分からないですけども、大体500~600枚近くのデータを2016年、2017年とかのフォルダからサルベージして一個一個探す作業を......。これが本当にキツかったですね。これに比べたら画集のデータ集めなんて全然!

駆け出しの頃の自分の拙い作画データを一個一個開いて悲鳴を上げながら、名前を命名規則に合わせて変えて、所定の場所に保存し、一個......二個......っていうのを三日三晩寝ずにやりました(笑)。

――絵の作業というよりはデータの収集みたいですね(笑)。

LAM:そうですね。でも絵の作業もヤバいです。今も終わってないです(笑)。

今回の個展は大きい規模感でテーマパークのような空間を作りたいという気持ちがあったので、昔から僕のことを好きでいてくれた方や、最近になって好きになってくれた方も、過去を振り返ったり新しい作品を見れたりするのが一番面白いんじゃないかな、と思いました。

あと、僕自身がIPにたくさん関わらせていただいているので、“色んなコンテンツでお世話になった恩返し”といった気持ちもあって、IP毎の特設ブースも用意しました。

前半は『takt op.』や『ZONe ENERGY』などの商業作品エリア、後半は新規オリジナル作品と区分して「LAM盛りだくさんセット」になっています。

LAM:盛りだくさんにしすぎたせいで新作の描き下ろしだったり、構想だったり、マネージメントだったりをやりながら、画集を進めて商業作品の許諾も取り、データを集めつつ、空間のプロデュースをして......インタビューにも答えるみたいな山のようなタスクに埋もれることにはなりました(笑)。

一同:(笑)。

LAM:そういう意味では大変だなって思いました。ただ、大変なのをやろうと決めたのは自分だったので僕のせいなんですけどね。

――それでは5年間を振り返りつつ、現在進行形のオリジナル作品までが展示されるということで?

LAM:そうです。かなり古い作品から一昨日描いたみたいな作品まで。もちろん、厳密には全ての作品を展示できる訳ではないのですが、そんなに描いてきたんだなって。展示できない作品も100、200とあって、よく描いたなと思いました。


《そりす》

ライター そりす

東京都福生市生まれのゲームライター。そしてお酒と革靴が好物でソロキャンプが趣味のミニマリスト気質おじさん。サ終ゲームのヒロインをAIで復活させてニヤニヤしたり、国語辞典を持ち歩いて山中フラフラしたりしています。ULキャンプに傾倒しているためSNSは大体キャンプの話題が多め。

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