■ゲームブック感覚で楽しめるサウンドノベル
『かまいたちの夜』はチュンソフト(現:スパイク・チュンソフト)のサウンドノベルシリーズ第2弾。主人公の透とガールフレンドの真理が冬のペンションで起こる殺人事件に巻き込まれていくという内容で、テキストを読み進めながら選択肢を選んで物語を進めていきます。ゲームブック世代もSFC世代も懐かしい感覚ですね。閉鎖空間で起こる殺人事件はサスペンスの鉄板!その場にいると想像するだけで背筋が凍ります。
■初期らしい、無駄がないシステム
サウンドノベルの第二弾でありながらも完成されたシステムをしており、ステータスやアイテムなどの要素がないため、物語にどっぷりとのめり込むことができます。操作はクラシックコントローラーで行いますので、持ってない方は事前に準備を。テキストはaボタンで送ることができ、xボタンでこれまで読んだテキストを読み返すことができます。操作はたったこれだけ。ミステリー好きのご年配の方にも勧められそうです。
■巻き戻ることはできません!
物語の途中には数多くの選択肢が存在し、その結果によって多くのエンディングが用意されています。犯人を推理しながら慎重に選択肢を選んでいきましょう。セーブは自動で行われるので、ゲームブックのように付箋まで巻き戻る、ということはできません。やり直すならば最初から、または章の始めからになってしまうので、うかつにネタ系の選択肢を選ぶと大変なことになります(もちろんネタ系エンディングを見るなら別ですが)。シナリオの分岐点はメモしながらプレイすると整理しやすいです。初見の方、昔やったけど内容を忘れてしまった方は、まずは己の勘にしたがって進んでみてはいかがでしょうか?結果が惨敗だと己の推理力に絶望しそうですが(笑)
■選択するだけではクリアできない仕掛け
犯人の特定は選択肢だけでなく、人物名を直接入力しなければならない場面もあります。選択肢を選んでいくだけなら犯人がわからなくてもそれっぽいものを選べばクリアできそうですが、そう簡単にいかないようになっているのがニクいですね。また、犯人がわかってないと絶対にひっかかる選択肢も用意されているので、推理力は必要不可欠。透の推理がミスリードである可能性もあり、うっかりひっかかって取り返しのつかないラストに行ってしまうなんてことも。一度のプレイは長くても3時間程度ですが、真のエンディングにたどり着くにはそれなりの時間と推理力が必要になります。
■一人称とサウンドがもたらす臨場感
物語は透の一人称で語られており、極限状態に置かれた主人公の混乱がとてもリアルに感じられます。また、登場人物はみな影で表現されているため感情移入しやすいです。背景や人物のビジュアルが物語を邪魔しないよう工夫されている印象です。さらに恐怖心を煽るのがBGM。「サウンドノベル」と銘打っているくらいですから、サウンドがもたらす心理効果は絶大。曲調は決して激しいものではありませんが、心理的にじわりとくる感じ。視覚と聴覚をほどよく刺激され、なんとなく落ち着かない気持ちになります。こればっかりはゲームブックでは絶対に得られないものです。
また、一部にアニメーションが使われたり、透が混乱しているシーンでは画面がぐにゃりと曲がるエフェクトが使われたりと、演出もなかなか凝っています。当然ながら若干のグロシーン(ほんとに若干ですが)もありますので、弱い人はご注意あれ(筆者はいわゆるバットエンドルートで少し気分が悪くなってしまいました・・・)
■君はいくつエンディングを見られるか!?
エンディングは多数用意されているので、全てをみるにはなかなか骨の折れる作業です。ですが、ネタ系エンディングもオチが付いていたり、ちょっとオカルティックな要素のシナリオに分岐したりと正規ルート以外も楽しめるので苦痛ではございません。基本1人プレイですが、初見の人たちで集まってあーだこーだ言いながらプレイするのも楽しいかも。
また、本作をやるからには「ピンクのしおり」を目指さねばほんとうの意味でクリアしたことにはならないでしょう!恐怖をかみしめながら、目指せ全ルート制覇!
(筆者はこの原稿がアップされる日にペンション「シュプール」のモデルになった「クヌルプ」に宿泊する予定です。真っ先に死亡フラグが立ちそうですがどうにか生き延びようと思います。その様子は後日レポート致します)
『かまいたちの夜』は、好評配信中で価格は800Wiiポイントです。
(※編集部よりお知らせ:『かまいたちの夜』はプレイステーション版がゲームアーカイブスでも配信中です。PS3やPSPをお持ちの方はそちらをどうぞ)
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■著者紹介
みかめゆきよみ
ゲーム好き、日本史好きの漫画家兼フリーライター。
ゲームはジャンル問わずなんでもござれ。難しければ難しいほど燃えるドMゲーマーです。
歴史・ホラー漫画、歴史コラム、イラストなど雑多に活動しています。
サイト「車輪の真上」
http://zwei.lomo.jp/syarin/