Gray氏は大学卒業後、EA Tiburonに勤務した後、Tommorrow Corporationを立ち上げ。3人のメンバーはいずれもEA出身者で、2D Boyで『World of Goo』(グーの惑星)を開発したメンバーも含まれます。
『Little Inferno』のアイデアは、任天堂の宮本茂氏の「ゲームの着想は身近なところにある」という考え方に基づき、Gray氏の部屋に積み上がっていたアマゾンの箱をどうにかしなければ、というところから生まれたそうです。「大量のダンボールを燃やしてしまえ」というわけです。可愛らしい物にも裏があったりする、とGrey氏は述べ『どうぶつの森』のアートワークを紹介。『Little Inferno』も可愛らしいキャラクターが、暖炉で物を燃やしまくるというギャップが何とも言えません。「悪いことは楽しい」にも通じるかもしれません。
当初は6ヶ月で作ろうとしていたという『Little Inferno』ですが、中身はかなり大きなアドベンチャーゲームで、暖炉で物を燃やすというのはゲームプレイの一部に過ぎなかったそうです。当時あったアイデアとして、単なる暖炉だけでなく、もっと巨大な物を燃やせる施設のようなものが登場したり、地下鉄で街を移動するというものや、部屋をデコレーションするというようなものがあったそうです。しかし、そうこうするうちに開発期間はどんどん伸び、最終的には製品までに2年半を要したそうです。途中、Wii Uのロンチタイトルにするという決断があり、これによって不必要な要素を削ぎ落とすという決断ができ、製品版のようなシンプルな「Fireplace Simulator」(暖炉シミュレーター)となったそうです。
ゲームの開発には他にも様々な失敗があったそうです。コンセプトに近い部分では、「Fireplace Simulator」というアイデアの理解のされなさです。「物を燃やすゲームといっても誰も理解してもらえないんだ」ということで、ユーザーからもメディアからも「奇妙なゲーム」という認識がされてしまいます。また、「地球温暖化に警鐘を鳴らすゲーム」という誤解をされたこともあったそうです。暖炉という概念が暖かい国では理解されないという問題もありました。
販売面では「アイテム課金のゲーム」という誤解もあったそうです。『Little Inferno』では暖炉で燃やすアイテムをゲーム内コインを使いショップで購入していくのですが、実際の現金で買うのではないかという誤った理解です。アイテム課金が一般化しつつあるとはいえ、現金で購入したアイテムを燃やして行ったら幾らお金があっても足りなくなりそうです・・・。
『Little Inferno』は決して"Little"ではないゲームとなり、Wii U、Steam、スマートフォンなど6つのプラットフォームで発売、7言語にローカライズされ、100万本以上が販売。インディーゲームで最も権威のあるIndependent Games Festival Awardsにもノミネートされるという栄誉にも浴しました。Gray氏の談では様々な"ミス"があったということですが、そうしたミスも含めて『Little Inferno』の不思議な世界観を補強しているような気もします。
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