Kinectの同梱をやめることで、廉価モデルの価格は499ドルから399ドルへ。カメラ非搭載モデルのPS4と同価格になりました。そもそも販売国数が異なるとはいえ、Xbox Oneの販売台数はPS4にじわじわと、しかし確実に離される一方でした。ですが、PS4の価格に優位性がなくなることでこれからXbox Oneの追い上げが始まることは想像に難くありません。
余談ですが、Xbox One1台あたりにかかるトータルコストは471ドルで、Kinectにはそのうち75ドルのコストがかかっていると報じられてきました。大量生産した今ならまた事情も異なるでしょうか、Kinectを外して価格を100ドル抑えたことで、利ざやは逆に小さくなっている可能性もあります。そう考えると、今回の決断はマイクロソフトの懐事情というよりは、PS4に離される現状を視野に入れてのことと言えそうです。
Kinect非搭載モデルが売れるということは、これまではいなかった「Kinectを所持していないXbox Oneユーザー」を生み出し、増やしていくということでもあります。Xbox Oneは現時点でもすでに500万台ほどを売り上げていますし、今後Kinect搭載の従来モデルも併売される、秋からKinectが単品販売されるなどというアフターフォロー的な措置も用意されていますが、やはりサードパーティーからは今後Kinectをフルに活用するようなゲームは出づらくなることが予想されます。
ですが、それ以前の話として「これぞKinect」、「これはKinectでしかできない」とまで言われるゲームがどれだけ出ていたかというと、決定打と言えるタイトルを欠いていたのもまた事実。逆説的ではありますが、そうしたタイトルがすでにあり、PS4との価格差を跳ね除けてXbox Oneの普及を後押ししていたなら、今回のような決断をする必要はなかったわけです。もちろんKinectはゲームで遊ぶためだけのものではありませんが、ことゲームのみに関して言うなら「新しい遊びにつながるデバイスを提案してみたはいいものの、それを十全に活かすアイデアがまだない」というところではないでしょうか。
こうした問題はXbox Oneにかぎることではありません。これはPS4のカメラについても、Wii Uのゲームパッドについても同じようなことが言えます。デバイスを用意しておきながらそれを活かしきれないのでは、デバイスのコストが価格に上乗せされる分ハードの売り上げが伸び悩むだけです。その現実を前にして、ソニーとマイクロソフトはそれぞれのタイミングで「非搭載モデルを併売する」という選択肢を取りました。「逃げである」という見方もできますし、「短期的に芽が出なくとも大丈夫なように腰をすえてかかることにした」という見方もできるでしょう。どちらの見方が妥当であるかは、今後のプラットフォーム戦略やソフトのラインナップ次第で決まります。
そして奇しくも、唯一不退転(=非搭載モデルを展開しない)の決意を見せているのは、現世代機で一番苦戦している任天堂という構図になりました。同社の岩田聡社長は5月8日に行われた決算説明会で「Wii Uゲームパッドがあるからこそ実現できるソフトタイトルの進捗をE3でお伝えする予定です」と意気込みを見せています。功を奏すればWii Uの普及を押し上げてくれるでしょうが、うまくいかなければ他2社より傷口が深くなってしまう危険も伴います。
マシンスペックや有力なサードパーティーをいかに誘致するかなど、ある意味パワー勝負といえるものが明暗を分けるのか、独自のデバイスを使った新しい遊びの提案が道を切り開くのか。据え置きゲーム機をとりまく現時点の流れは、前者に傾きつつあるように見えます。とはいえ、その道の先には「PC」という強大な存在があるわけで、短期的にはよくとも、こちらの道が安泰であるとは限りません。プラットフォームホルダー各社は今後どちらにどれだけの力を割いていくのでしょうか? 6月に開催されるE3 2014は、そうした視点で見てみるのもいいでしょう。