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左:PUMO竹下氏 右: RucKyGAMES氏
かつてスマホアプリ界の話題を群馬一色で染めあげた異色作『ぐんまのやぼう』。3DSへの移植が発表され、「まさかの立体視!?」と再びゲーム業界を騒然とさせたのも記憶に新しいところ。リリース後のセールスも好調で、ニンテンドーeショップが群馬で制圧されつつあります。そこで編集部では『ぐんまのやぼう』生みの親である RucKyGAMES氏と、3DS版の開発を手がけた株式会社PUMO竹下氏にインタビューを行いました。
―本日は宜しくお願い致します。『ぐんまのやぼう』がスマホから3DSへと移植されたわけですが、立体視についてどのようにお考えでしたか?
RucKyGAMES氏(以下敬称略):僕は3DSは立体視で遊ばないので(一同爆笑) 正直、あまり考えていませんでした。開発中にそんなに大変ではないから入れようという話になっただけで。
―ではたまたま3DSに移植しただけで立体視があるからというわけではなく。
RucKyGAMES:そうですね。立体視より2画面の方が重要でした。実際立体視対応と言うほど立体でもないじゃないですか(笑)
―スマホ版『ぐんまのやぼう』は群馬県民のみ、というかご自身のみで作ったとお聞きしましたが、3DS版はどうなのでしょうか?
RucKyGAMES:群馬県外の方も入りました。神奈川県の方がプログラマーだったりとか。神奈川県って関東圏の頂点に近いじゃないですか。だからちょっと小馬鹿にしながら作られたんじゃないかなと(笑)
―平成の大合併の前後の白地図がありますが、群馬だけではなく全国調べ上げた、その執念というか、真面目さのギャップに驚きです。
RucKyGAMES:別のスマホアプリ版で用意した流れで作りました。やり始めた時にやらなきゃよかったと感じましたね(一同爆笑) だいぶありますからね。4千枚くらいカードを用意したかな。新潟県は合併しすぎですね。
―本作のレビュー記事を書かせていただいたのですが、最後に「こんな人にオススメ!」としていくつかあげた項目のうち、半分が勉強になる系で。まさかの教育ゲーとして仕上がっていると感じました。
RucKyGAMES:初代『ぐんまのやぼう』のコンセプトが「無駄に群馬県の市町村名を覚える」ということで、ニュース等で群馬県の地名が取り上げられると反応してしまうといいなぁと。いやがらせのようですね(笑) 学校の勉強にはあまり役にたたないと思いますが。
―あの特徴的な「グンマー」ボイスはご自身の声を加工されたということですが、3DSに移植するにあたり、変更するという話はなかったのでしょうか?
RucKyGAMES:なかったですね。あまり音質もよくないのですが、録り直す方法がわからなかったのでスマホ版のものをそのまま使っています。
―別の方が対応するという話もなく?
RucKyGAMES:はい。あの声を変えてしまったら何か言われそうですし。
竹下氏(以下敬称略):次回はすごい声優さんを起用しちゃったりして(笑)
―声優といえば、プロモーションムービーで田中敦子さんを起用していますが、作中に起用しようという話はなかったのですか?
竹下:プロモーションの段階になって田中敦子さんのお名前があがってきて。
RucKyGAMES:制作中は何にも考えてませんでしたね。今思えば、田中敦子さんに参加していたけばよかったかなぁ。
■移植&PV裏話
―スマホアプリは起動回数が、コンシューマゲームは起動時間がポイントだと思います。本作のざくざく感はやはりそこを意識しているのでしょうか?
RucKyGAMES:そうですね。さすがに3DSでスマホ版と同じにして待たせるわけにはいかなかったので。ぐんまちゃんのおかげで放置ゲーにもなったのでよかったんじゃないかなと。
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―ぐんまちゃんを休まず働かせています。もはやブラック企業ですね。
RucKyGAMES:3DS史上初めての放置ゲーになると思っています。
―上画面の項目をいじっていても下画面では収穫ができるというアイデアは3DSの特性をフルに活かしているのではないかと!
RucKyGAMES:2画面をうまく使えたかなと。このアイデアはすごいなと思いました!
竹下:自分で作っておいて(笑)
―画面の分割は分かりやすい変更点だと思うのですが、わかりづらいけどこだわった点などあったら教えてください。
竹下:制圧に必要なG(ポイント)はRucKyGAMESさんがガンガン調整を加えられていましたね。
RucKyGAMES:だいぶ後半に星座がでてくるのですが、制圧に必要なGの下四桁が星座の日にちになっているとか。
竹下:『Miiverse(ミーバース)』を見ていると、特産品を一定数収穫すると出てくるメッセージから小ネタを見つけて喜んでいただけたりしているようですね。野沢菜の説明文の「おっすおらやさい」とか(編集部注:『ドラゴンボール』の主人公・孫悟空の声優は野沢雅子さん)。
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特産品の説明文がツボ。このネタきっと若い人にはわからない。
―実は私も群馬出身なのですが、「ひもかわうどん」が全国共通ではないと本作で知り驚きました。
RucKyGAMES:僕も去年くらいに知りました。僕の住んでた地域では水沢うどんが有名です。
竹下:あ、あと小ネタといえば、全体マップの一番端に行ったときに…
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―「こっちなんもない」って(笑) これは気がつきませんでした!
RucKyGAMES:苦肉の策ですね。
竹下:これも『Miiverse』に投稿されていたりして(笑) 小ネタは喜ばれますね。
―『Miiverse』が3DSに対応した後にリリースしたのもタイミング的にはよかったのではないでしょうか。
竹下:まさかこんなに書き込みがあるとは思いませんでしたね。
RucKyGAMES:ネタバレとかも気にせず書かれてますね。エンディングの画像も貼られてる(笑)
竹下:3DSで『Miiverse』へ投稿するのはWii Uよりも手間がかかると思っていたのですが、ユーザーのみなさんが投稿の仕方をよく理解されていて驚いています。
―PVの裏話をお聞かせください。
竹下:PV用の台本を初めて読んだときRucKyGAMESさんと「面白くしようとしてやりすぎてかえってスベったらどうしよう」って話をしていたんです。現場にいって田中敦子さんに喋っていただいたら「さすがプロだな」と。「グンマー」って語尾のトーンを上げるところもこちらから指示したわけではなく、自然にやっていただいて。
―田中さんもスマホ版をプレイされていたようですね。
RucKyGAMES:そうなんです。実家も近くでした。なんとなく場所はわかる程度で。
竹下:収録の合間のトークでもローカルネタで盛り上がってましたね。
RucKyGAMES:そういえば、そちらの地域には焼きまんじゅうにあんこが入っていますか?
―入っていないです!
RucKyGAMES:入っている地域があるそうです。邪道ですよね。パンみたいでお腹にたまるのがいいのに。
■法人化して変わったこと
―RucKyGAMESさんは法人化されましたが、アプリ制作環境はどのように変化しましたか?
RucKyGAMES:法人化して一番よかったのは名刺がカッコいいってところですね。「代表取締役」って書いてあるとデキる人って感じがしますよね。
―法人化する前からコンシューマ機への参入は考えていたのですか?
RucKyGAMES:いや…でもあわよくば、はありましたね。以前勤めていた会社はコンシューマーゲームの開発をしていたので、やれなくはないなと。
―今回の移植はPUMOさんからの提案ですよね。
竹下:そうですね。弊社が3DS向けのゲームのパブリッシャーとして正式に参入して、何を作ろうかという話になったときに、真っ先に浮かんだのが『ぐんまのやぼう』だったのです。実は私は元々ハドソンに在籍していたのですが、その時にRucKyGAMESさんとアプリを制作してて。『僕とちくわと鉄アレイ』ってゲームなんですけど。その時から縁があったのです。
―今後人員を増やす予定はありますか?
RucKyGAMES:今はグラフィッカーのみですが、今後増やす予定はありません。法人化したとき、「頑張るので入れてください!」というメールをいただいたのですが、本当にごめんなさいと(一同爆笑)
■群馬観光特使として群馬をPR!
―せっかくなので、群馬に対する熱い思いを語っていただけたらと思います!
RucKyGAMES:富岡製糸場が世界文化遺産になってピークが終わってしまったなぁ…群馬県ね…(しばし思案)東京から近いから来たほうがいいよ、ってところでしょうか。一番いいのは「ガトーフェスタ ハラダ」は群馬県のものなんだよと(一同爆笑)
―ハーゲンダッツの工場があるのもポイント高いですよね。
RucKyGAMES:ええ、あれも群馬県です。あと草津温泉は群馬県ですから。草津と群馬が結びついていないんです。それが許せなくて。
―カードの項目で他の都道府県は汎用ビジュアルですが、群馬だけ豪華ですね。
RucKyGAMES:スマホ版で作った画像です。グラフィッカーさんに頼む時、群馬だけ描いて、あとはどうでもいいよと(笑) これ見てください
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おもむろに取り出したスマホのカバーが『ぐんまのやぼう』仕様!
―おお!
RucKyGAMES:パッと見て群馬県とわからないですよね。ただのアレな人っぽい(笑)
―そのヤンキーっぽさが群馬らしいですね(笑)
■個人アプリ制作者の希望として
―本作以外で、今まで作ったアプリを3DSへ移植する予定は?
竹下:もちろんこれでおしまいではなく、最低3本はやりましょうねと話しています。
RucKyGAMES:1本出したのでしばらくは旅にでます(笑)
竹下:弊社側ではRucKyGAMESさんだけでなく、他にもスマートフォンアプリを開発している方と協力して、スマホから3DSへの移植化はいくつか進めています。
RucKyGAMES:『ぐんまのやぼう』よりマジメなタイトルばかりですよ(笑) 『ぐんまのやぼう』は盛り上がりだけはすごかったので、後からリリースされる方はやりづらいでしょうね。
竹下:RucKyGAMESさんは個人のスマホアプリ制作者の草分け的な存在ですから、その人がスマホから3DSへの移植作品を作ったというのは、他クリエイターさんにとっても良いニュースになるのではないかと思います。
―RucKyGAMESさんが新規に3DS専用ゲームを作る予定は?
竹下:もちろん、RucKyGAMESさんのほうで「こんなのをやりたい」と思いついたらぜひ!
RucKyGAMES:思いつかないですね(一同爆笑)
竹下:物理キーがあるかないかがスマホと考え方が違いますからね。
―RucKyGAMESさんは日々の生活の中からピンときたものをネタにしてアプリを作られることが多いのかなと感じました。
RucKyGAMES:そうですね。ただ、自分が作れないものは考えられない。3DSは作れないというのが根底にあって、だから難しいなぁと。
―今回の移植は3DS専用ゲームをひらめくきかっけになったのではないでしょうか?
RucKyGAMES:移植化は難産でしたからね。もし読者の方でいいアイデアがあったら送ってください。
―「インサイド」のコメント欄にぜひ投稿してください(笑)
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―最後に、『ぐんまのやぼう for ニンテンドー3DS』について一言お願いします。
竹下:『ぐんまのやぼう for ニンテンドー3DS』をまだ遊んでいない方はぜひプレイしてみてください。ただの移植ではないので、スマホ版をプレイした方でもまた違う体験ができるところがポイントです。また、今後のシリーズも注目していただけたらと思います!
RucKyGAMES:遊ばなくてもいいのでダウンロードしてください(一同爆笑) 1回のランチ、1週間分のコーヒーを我慢すれば500円捻出できます。レビューを書かれている方はぜひ触って文句を書いていただければと思います(笑)
―ありがとうございました!
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ご本人の発言からにじみ出るシュールさが『ぐんまのやぼう』には詰まっていると感じました。次回作が楽しみです(期待とプレッシャーを込めて!)