

本作はディースリー・パブリッシャーの乙女ゲームで、もともとはアプリ『逆転吉原』として登場。PS Vita版の発売前にアプリ版も遊んでみましたが、イベントスチルも高解像度向けに調整されていて、描き足しも含めより美麗なグラフィックを堪能できるように。アプリと比べて1度に表示される文字数も多いせいか、言い回しなどがより丁寧に、濃密になっている印象を受けました。
さらに新キャラ「伊東慶次」の追加、新エンディングルート「悲恋」の追加、フルボイス化、格好いいオープニングムービーなどなどアプリを堪能したお嬢さんでも改めて楽しめる内容になっています。

システム面では、ボタンに加えタッチ操作にも対応。個人的にはLボタンで自動、Rボタンで早送りを切り替えるより、画面をポンポンっとタッチするほうが簡単でした。文字送りも文末のタッチで行えますし、画面を上から下にスライドするとバックログ、下から上でセーブやオプション画面をさっと呼び出せます。特にアプリで遊んでいた人は、タッチのほうがしっくりくるかもしれませんね。
そして1番ありがたかったのが選択肢での「オートセーブ」です。選択肢の前でセーブをしようと思っていても、うっかり忘れる事の多い私には便利でした。□を押しながらLボタンでクイックロードとオートセーブのロード、□を押しながらRボタンでクイックセーブと、操作もすぐに覚えられるくらい簡単です。欲をいえば、選択肢で早送りを解除する・しないも選べると最高でした。操作方法は、スタート画面の「?」マークのついた本のアイコンでも確認できますよ。

ちなみに、もともと『逆転吉原』の企画段階のタイトルが「男遊郭島」だったという裏話や、PS Vita版とアプリ版の違いなどをシナリオ/原画を担当した「ひつじぐも」のブログで紹介しています。プレイ済の方もぜひ一度見てみてくださいね。
さて、本作の舞台となるのは、男がほとんど生まれない島「女宝島(めほうじま)」。そのため女が男と出会い、子供を身ごもるためには「吉原遊郭」で男を買うよりほかありません。
この吉原に集っているのは、たまたま生まれた男、島の外「本土」から売られてきたなど、さまざまな理由を抱えた若く美しい男たちばかり。彼らは手練手管(てれんてくだ/人をあの手この手で巧みに操る様)で、愛を求める女に一夜の夢を売ります。
主人公の「偉宝(ひでとみ)みさを」ちゃんは、そんな風習を当たり前として育った女の子。とはいえ、彼女自身はまだ男女がもつ本当の愛憎、愛欲の渦巻く「郭遊び(くるわあそび/遊郭で遊ぶこと)」を知りません。

しかし、ひょんなことからある男女の命がけの逃亡を手助けし、お礼として大金を手にしてしまいます。そんな彼女が、これまたちょっとした勘違いから宴を一席設けると誘われてしまい、どの傾城(けいせい/体を売る遊女のこと。本作では男性)を選ぶかというところから物語が始まります。
当初こそ、女を悦ばせる術に長けた彼らに魅了されるみさをちゃんですが、彼女の純粋で一途、ひたむきな愛情に傾城も少しずつ惹かれていきます。でも本来傾城は、誰にでも夢を売る一夜限りの関係。その情愛がただ1人にのみ向けられることは、あってはなりません。嫉妬に狂う女、本当に好きではない傾城の子を産んだ女、愛した人ではなくお金持ちに身請けされてしまった男…この島にはそんな悲しい運命に翻弄された男女がたくさん存在するのです。
時代としては、現代でいうところの明治~大正くらいでしょうか。島の人や傾城たちは和装ですが、ブラウスにスカートという主人公をはじめ、本土や海外に関係する人は洋服を着ていることも多いです。一部の傾城は洋装姿も披露してくれるので、プレイ中のお楽しみとしてご期待ください。
そんなわけで、本作には普段ほとんど聞かな、古めかしい言葉が出てきます。先ほどから少し紹介していますが、ここで簡単にまとめておきますのでプレイの際の参考にしてみてください。あくまで本作向けのざっくりした解説なので、実際の意味とは異なる場合がありますのでご注意を。
■禿(かむろ)
傾城の世話をする子供。ここでは少年。「ハゲ」じゃない。
■おぼこ
まだ男を知らない女、生娘(きむすめ)のこと。
■丁稚(でっち)
店で下働きをしている人。
■初心(うぶ)
初々しい様、男女の関係を理解してない状態。
■年季明け
借金の形など、売られた傾城が店への借金を返し終わった状態。
■身請け
傾城の抱える借金を肩代わりしてあげること。現代の数千万ともいわれる。
■花魁(おいらん)
位の高い傾城のこと。
■振袖新造(ふりそでしんぞう)
まだ客を取る前で、体を売ったことがない見習い傾城。
■遣り手(やりて)
遊郭全体を管理する立場の人。年季明けした傾城が務める場合も多い。
■夜鷹(よだか)
位の低い傾城。
■花魁道中
花魁が若い傾城をたくさん連れて吉原を歩くこと。
■金子(きんす)
要するにお金。
みさをちゃんのキャラクター紹介にさらりと「生娘」って書かれるのはちょっと面食らいましたが、ゲーム内でも普通に言われます。その辺りも覚悟して遊んでくださいね!