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注連寺は弘法大師が開基し、その後、弟子の真然大徳が湯殿山権現堂を建立したと伝えられています。
出羽三山で修行をする修験者が身に着ける装束に、首から下げる注連縄があります。これは自らを守るための結界なのだそうです。注連寺はその名の通り、湯殿山を護る結界なのです。
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女人禁制の時代はここまでなら入ることが許されてていたため、多くの女人の信仰を集めました。しかし明治時代の神仏分離において出羽三山がいずれも神社になると、女人禁制も解かれ、湯殿山参詣所としての注連寺の役割は急速に失われてしまいました。
苦難の時代を経て、現在はのどかな風景が広がっています。昔はこの道も多くの修験者でにぎわっていたのでしょう。
本堂のすぐそばまで車で入ることができるのでとても楽ちんでしたが、やはりこれでは試練にならないような…それはさておき、本堂の中へ入ります。
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そしていよいよ即身仏とご対面! 本堂向かって左側に鉄門海上人が鎮座しておりました。
第一印象は「大きい」。これまで見てきた即身仏よりも一回り大きい印象を受けました。
鉄門海上人は宝暦9年(1759)鶴岡市大宝寺村に生まれ、25歳の頃に武家と遊女を巡って喧嘩し、相手をなぐり殺してしまったためその足で注連寺に逃げ込み、仏門に入ったと言います(『日本ミイラの研究』)。真如海上人の時もそうですが、当時の寺は「アジール(聖域の意。宗教的権威によって民衆の生活を保護した場所)」として機能していたようでです。仏門に入った鉄門海は人に尽くし、加茂坂に新道を通す土木工事も行ったといいます。
また、眼病が流行した折には自ら左目をえぐり、隅田川に投じて病気平癒を祈願したのだそうです。確かによく見ると鉄門海上人の左目はえぐられた跡がありました。
ちなみに鉄門海上人は男性にとって大事な部分も自ら切り取ったという伝説があります。しかもそれは商売繁盛のご利益満点で、現存しており、学術調査の結果、鉄門海上人と同じ血液型であったそうです。ますます興味がそそられます。
鉄門海上人は数多くの伝説を残しており、庄内地方には多くの碑が建立されています。第一の祠の本明寺の住職もしていたらしく、本明海上人の項でも触れましたが、本明海上人が鎮座するお堂を建てたのが鉄門海上人であるという記録も残されています。「あのお堂を建てた人が目の前にいる」という事実。実に不思議な体験です。
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文政12年(1829)鉄門海上人は62歳で入定し、即身仏となったといいます。
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境内にある「七五三掛桜」。この下で弘法大師が修行をしたと伝えられています。女人禁制の時代には女性はこの桜の下で修行したといいます。桜の木ですし、実にいいデクの樹サマ感を醸し出しています。サイズ的にはサトリ山の桜の木かも!?
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時代を感じさせる石碑たち。ここにもコログがいそうです。
注連寺の本堂には天井絵画がいくつも奉納されており、美術鑑賞もできます。ちなみに鉄門海上人と天井絵画および鰐口は「ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン」にも選ばれているのだとか!
試練という試練もなく、一方的に霊力をいただき、最後の祠へと向かいます。
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